答は、見つけるものではなく ― 考えるもの。このガイドが渡すのは、答えの一覧ではありません。自分の仕事に当てるための「問い」です。
なぜ「正解集」で済まないのか。仕事の中身は人によって違い、あなたの工程にいちばん効く手は、あなたの工程を見た人にしか出せないからです。同じ「速くするコツ」でも、効く場所は人によって変わります。
だからこのページは、覚えれば済む「正解集」ではありません。渡すのは、自分の仕事に当てるための問いです。問いに答えるのはあなたで、答えは、考えたぶんだけ出てきます。以降の節は、その問いを「消す → まとめる → 速くする」の順に並べたものです。
消せた工程にかかる時間は、ゼロになります。いちばん大きい時短が、いちばん上にあります。まずここを問うのが、遠回りに見えて最短です。
消せない工程も、別の工程と一緒にできないか、順番を変えて「待ち」を減らせないかを問います。手待ち(承認待ち・データ待ち)は、事務仕事の遅れの原因になりがちです。
消せない・まとめられないと決まった工程だけを、キー操作や登録機能で速くします。順番の最後に置くのは、効果がいちばん小さいからではなく、上の2段を飛ばすと「要らない工程を速くこなす」だけになるからです。
多くの場合、手はいちばん下の段(ショートカットを覚える)から動きます。それ自体は、確かに速くなります。ただ、その工程がそもそも消せるものだと、速く打っても全体の時間はあまり動きません。上の段から順に問うと、同じ手間がより大きく効きます。
前の節が「速くする順番」の地図なら、この節はその第1段「消す」を実際どう判断するかです。工程を消す前に、たった1つだけ確かめます ― この工程は、何の目的のためにあるのか。目的が言えれば、その目的が別のやり方で満たせるか(消す・まとめる)を考えられます。逆に、目的が言えないまま消すと、必要だった工程を落として、やり直し(手戻り)になります。だから、消す判断のときだけは、目的を言葉にしてから動きます。
毎朝、5つのファイルを開いて、数字を手で1枚に転記していた(約10分)。
この転記の目的は「5つの最新値を、1枚で見比べること」。目的は転記しなくても満たせると気づく。
5つの値を1枚にリンクで参照。転記という工程そのものが消え、毎朝およそ10分の作業が、ほぼ不要に。
前の節では「消す前に目的を言葉にする」と述べました。では、目的がまだ言えないときは。その逃げ道が、この節です ― ただし使えるのは、やり直せる工程だけ。「目的を先に理解してから動く」と「まず動く」は、ぶつかって見えます。人は動いてみて初めて分かる部分があり、一歩踏み入れたほうが目的が早く見えることもある ― これは本当です。ただし、どちらを選ぶかを決める線は、1本だけです。その工程は、やり直しが利くか(可逆)/利かないか(不可逆)。
下書き、自分の中だけの試し、すぐ元に戻せる作業。ここはまず動いていい。間違えても、やり直しが利くぶん損失が小さいので、動くことが目的の理解を最短で連れてきます。
相手に出す、承認をもらう、数字を確定する。ここで間違えると、やり直し(手戻り)=最悪の無駄になります。だから理解を先に。
つまり、最初に決めるのは「理解が先か、行動が先か」ではありません。この工程はやり直せるかを先に見きわめる。それが、動いて学ぶか、考えてから動くかを決めます。
ここまで問うて、消せない・まとめられないと分かった工程は、いよいよ道具で速くします。キー操作でマウスとの往復を消す具体は、キー操作の基本にまとめました。この段は「覚えれば速くなる」=答えのある部分なので、覚えるのが近道です。
キー操作が効くのは、消せない工程に絞ったあと。その残った工程の中では「見て理解する速さ」が上限を決める ― という話を、次のページで扱います。
「置いておく」は、消す・まとめる・速くするの順番の外にある、全工程に効く別の工夫です。よく打つ言葉は単語登録、よく使う文面はクイックパーツ、よく開く場所はショートカット。一度きりの手間が、次からは繰り返し回収されます。
置いておく価値があるかは、たった1つで決まります ― これは今後も繰り返すか。一度きりなら、置く手間のほうが損。繰り返すものだけ置いておけば、その工夫は「次から効いてくる持ち物」に変わります。